
2020年の学習指導要領改訂から6年。英語教育は、この数年間で大きく姿を変えました。
小学校での教科化、中学校での“英語でのやり取りを増やす授業”の推進、高校入試や大学入学共通テストの英語の難化、入試での外部検定活用の拡大…。今の子どもたちは、保護者世代が経験してきた英語教育とは大きく異なる環境で学んでいます。
小学校英語の教科化により、子どもたちは小3から英語に触れ、小5からは成績がつく教科として英語を学び始めています。 そのため、中学校に入る時点で「英語に慣れている」ことが前提となり、かつては中1の後半〜中2で学んでいた文法や表現が、現在は中1の1学期から登場するケースも珍しくありません。
こうした前倒しの流れは、入試にも及んでいます。
首都圏の中学入試では約半数の学校が英語入試を導入していますが、地方でも英語を選択できる方式や英検を加点する方式が増えています。
高校入試では、東京都のようにスピーキングを直接測る県はまだ限られていますが、全国的にはリスニングの配点増、英作文の拡大、長文読解の長文化など、読む・聞く・書く力がより重視される“4技能化”の流れが確実に進んでいます。
大学入試では、私立大学の半数以上が英検などの外部検定を活用し、国公立大学でも利用が広がっています。
こうした流れの中で、英語は「後から頑張る」では追いつきにくい科目になり、小学生や中学生のうちから英検3級や準2級を目指す動きが前倒しで進んでいます。
文部科学省の2025年度調査では、中3の54.6%が英検3級相当以上に到達しており、英語力の底上げが全国的に進んでいることがわかります。 さらに、日本英語検定協会のデータでは、2024年度の中学生の準2級受験者が27万人を超え、10年前の約1.6倍と、中学生で準2級を目指す動きも広がっています。
高校段階では 英検準2級・2級の取得が一般的な目標になりつつあります。特に大学入試との関連が強く、英検2級を高校在学中に取得する生徒が増えています。国公立大学では 英検2級(CEFR B1)を求める大学が46%で最多、私立大学では 準2級(A2)で受験可能な大学が約半数を占めています。
こうした前倒しの流れにより、子どもたちの英語力は、底上げされています。早くから英語に触れてきた子どもたちは、中学校に入ってからもスムーズに学習を進めやすく、英語を使う場面での抵抗感も少なくなっています。一方で、英語に触れる機会が少なかった子どもたちは、中学校の学習スピードに戸惑うこともあり、学年が上がるほど追いつきにくさを感じやすいという課題もあります。つまり、英語の得意・不得意の差が広がりやすい構造が生まれているのが現状です。
こうした現状を踏まえ、2030年度からの次期学習指導要領では、英語教育が再設計されます。
文部科学省の外国語ワーキンググループの取りまとめ案では、次期指導要領のキーワードとして「使える英語へ」が明確に示されています。小学校から中学校への接続を改善し、中1の最初に緩やかな移行期間を設けるなど、子どもたちが無理なくステップアップできるようにする構造的な見直しも進められています。さらに、次期指導要領ではAI活用が初めて明文化される予定で、スピーキング練習の相手としてAIを使ったり、英作文の添削をAIが支援したりと、一人ひとりのペースに合わせて“使う英語”を伸ばせる環境が整えられます。
これらの改革は、前倒しで身につきつつある基礎力を、実際のコミュニケーションや表現につなげるためのものです。
英語教育は、身につけた力を活用し、実際に使える英語へとより進化する段階に入ろうとしています。次期指導要領は、その転換点となる大きな改革になると考えられます。


