文部科学省より4月26日に「大学入学者選抜における総合型選抜の導入効果に関する調査研究」が発表されました。
文部科学省は、教育改革の柱として、「高大接続改革」を推進していますが、その改革の一環として、大学入試の選抜の在り方についての改革も進めています。総合型選抜は、「AO入試」も含めると、20年を超える歴史があり、各大学が様々な観点、評価で選抜をしています。その歩みについてまとめた結果より、総合型選抜の広がりや、総合型選抜を経てどのような人材の育成を求めているのかを読み解いていきます。
本コラムのポイントは、1.総合型選抜導入の広がり、2.導入の目的、3.総合型選抜を通じて求める人材の3点です。
1.総合型選抜導入の広がり
総合型選抜を導入している大学は、国立大学で78%、公立大学では43.6%、私立大学では93.4%におよび、大学全体では85.6%で、導入されています。
学部系統別では、「人文科学」85.5%、「社会科学」86.8%と、いわゆる文系学部の導入が多く、「理学」76.8%、「農学」72.2%と、理系学部の方が導入の割合はやや低い傾向でした。
導入している大学数は多いものの、募集定員に占める割合では、国立大6.7%、公立大3.8%、私立大13.8%と全体でも12.2%で、学校推薦型の割合が27.6%、一般選抜が57.5%と比較すると、総合型選抜での入学は狭き門であることは間違いなさそうです。
2.導入の目的
導入の目的アンケートを見ると、多い順に、「学力の評価だけではなく、受験者を多面的・総合的に評価する選抜を実施するため」「アドミッション・ポリシーに適った入学者をより丁寧に選抜するため」「主体性・多様性・協働性を持って学ぶ姿勢や態度を持つ入学者を選抜するため」という項目が並び、大学側が育成したい人材像や、選抜したい人材像を持っているということがわかりました。
3.総合型選抜を通じて求める人材
導入の目的からも、学力検査だけでなく、多面的・総合的な評価を行うことで、主体性・多様性・協働性を持つ、大学の方針に敵う入学者を選抜したいという意図が分かります。より具体的な表現で、各大学が企図する総合型選抜の狙いとして、「学ぶ人材の多様性を担保」するため、
・尖った人材
・伸びしろ(本質を捉える能力)を感じられる人材
・共に学ぶ学生をリードして、より一層の高みを目指すリーダーシップ力、コミュニケーション力を有する人材
等に着目した選抜が展開されている。ということもまとめられていました。
大学入学者の割合から考慮すると、学力面での研鑽はもちろん必要ですが、学力だけでない個性や魅力が求められているということもわかります。これら、求められている力は、社会に出た際に必要となる力に通じます。大学受験や社会に出るのはまだまだ先のこと…と思いがちですが、入試の変化を見ていると、社会の変化に対応する人材を選抜・育成しようという意図がひしひしと伝わってきます。小中高の時代に、「好き」を見つけて打ち込むことや、主体的に取り組める興味関心の芽を育てること、周囲と協働する姿勢を持つことなども大切にしていかなければならないと感じました。
参考資料:01 大学入学者選抜における総合型選抜の導入効果成果報告書概要
20240426-mxt_daigakuc01-000035712_1.pdf(保護) (mext.go.jp)