高校英語は、中学英語と比べて格段に内容が広がり、表現の幅も複雑になります。単語の量が増え、文法もより高度になり、長文読解やリスニング、英作文など、さまざまな能力が求められます。そのため、多くの保護者の方は「うちの子は本当についていけるのか」と不安に感じるものです。
実際、子どもたちは中学までは文法や単語を覚える学習が中心でしたが、高校ではそれに加えて「使える力」を身につける必要があります。読んで理解する力、聞いて正しく受け取る力、書いて伝える力、話して意思を表現する力──すべてをバランスよく伸ばすことが、高校英語の学習成功の鍵です。
今回は、保護者の方が日々のサポートの参考にできるよう、高校英語を基礎から応用まで着実に身につける6つのステップをまとめました。学習内容だけでなく、家庭での見守り方や日常での工夫も紹介しています。
はじめに:高校英語が中学とどう変わるか/保護者が抱きがちな不安
「中学までは何とかついていけていたのに、高校に入ったら急に英語が難しくなった」――こんな声を、保護者の方からよく耳にします。実際、英語は中学から高校に進学する際に大きなギャップが生まれやすい教科のひとつです。中学校のときは「be動詞と一般動詞の違い」や「現在形・過去形」といった比較的わかりやすいルールを学んでいました。しかし高校に入ると、仮定法・分詞構文・関係代名詞の応用・複雑な時制の使い分けなど、一気に抽象度が上がり、同じ「英文法」でも扱う内容のレベルが格段に高くなります。
また、授業スピードの速さも保護者が驚くポイントです。高校の授業は「大学受験」を前提にしているため、学習範囲が広く、1つの単元にじっくり時間をかけるよりも、ある程度のスピード感で進んでいきます。中学のときに「テスト前にまとめて勉強して何とかなる」タイプだったお子さんは、このスピードに対応できず、「気づいたら置いていかれている」という状況に陥りがちです。
さらに、高校英語では「読む・書く・聞く・話す」の4技能をバランスよく伸ばすことが求められます。特に近年は大学入試改革の流れもあり、従来の「文法・単語重視」から「読解やリスニング、さらには表現力」へと重心が移ってきました。入試問題でも、以前より長い英文やリスニング問題が多く出題されるようになっています。そのため、「単語や文法はできるけど長文になると歯が立たない」「リスニングが全く聞き取れない」といった悩みを抱える高校生は少なくありません。
高校英語で「急に難しくなるポイント」
では、具体的にどのあたりが「急に難しくなった」と感じる要因なのでしょうか。大きく3つに整理できます。
- 文法が一気に複雑化する
中学英語では「型に当てはめれば何とかなる」レベルでしたが、高校では「なぜその形になるのか」を理解していないと応用できない問題が増えます。たとえば仮定法。「If I were you, …」のような表現は中学でも触れますが、高校になると「仮定法過去完了」や「混合仮定法」といったパターンが出てきて、時制の理解があいまいだと混乱してしまいます。 - 長文読解の文章量が増える
中学校の定期テストでは数十語程度の英文が多かったのに対し、高校では数百語、場合によっては千語近い長文を扱うこともあります。内容も「科学」「歴史」「文化」など多岐にわたり、日本語でも難しいテーマを英語で理解する必要があります。 - リスニングやスピーキングの比重が増す
英語を「テストのために覚える」だけでなく、実際に「使う力」が問われるようになります。スピードが速い音声を聞き取る、与えられたテーマで自分の意見を英語で書く・話すといった課題は、中学ではあまり経験しないため、戸惑うお子さんが多いのです。
保護者が感じる「我が子は本当についていけるか」の焦り
こうした変化に直面すると、多くの保護者が「うちの子、大丈夫かしら…」と不安を抱きます。特に以下のような場面で焦りを感じやすいでしょう。
- 定期テストで急に点数が下がった
中学時代は80点、90点を取れていた子が、高校に入ると急に50点前後に落ち込むケースがあります。保護者としては「勉強していないのでは?」と心配になりますが、実際には「勉強しているけれど方法が合っていない」「学習量に対して範囲が広すぎる」という理由が大半です。 - 英語への苦手意識が強くなる
「授業が速すぎてわからない」「長文を読んでも頭に入らない」と感じると、子どもは自信を失い、やる気をなくしてしまいます。保護者からすると「ここでつまずいたら大学受験まで響くのでは」と不安が募ります。 - 親自身がサポートしづらい
数学や国語なら一緒に考えてあげられるけれど、英語となると「自分も昔から苦手だったし…」と感じ、手助けできないもどかしさを覚える方も多いです。そのため「どうフォローすればいいのか分からない」という悩みもよく聞かれます。
こうした不安や焦りは自然なことです。ただし大切なのは、「高校英語は最初につまずきやすいが、正しい順序で対策をすれば必ず取り戻せる」という事実を理解しておくことです。焦って一度にあれもこれもと詰め込むのではなく、語彙 → 文法 → 長文 → リスニング・表現力といった段階を踏んで積み上げていくことが、最も効果的な学習法です。
保護者としてできることは、まず「子どもが今どの段階でつまずいているか」を把握し、「一歩ずつ前進していけば大丈夫」という安心感を伝えることです。お子さんの勉強法や学習習慣を見守りつつ、必要であれば学校や塾の先生と連携してフォローしていく。この姿勢こそが、高校英語を乗り越えるための大きな支えになるのです。
ステップ1:語彙力(単語・熟語)を土台から強化
高校英語の学習において、最初の大きなハードルとなるのが「語彙力」です。どれだけ文法を理解していても、知らない単語が多ければ英文は読めませんし、聞いても意味がつかめません。逆に言えば、単語力はすべての英語学習の基礎になります。数学で言えば「九九」のようなものです。九九が覚えられていなければどんな応用問題も解けないように、英単語が身についていなければ長文読解もリスニングも太刀打ちできません。
なぜ高校英語では語彙力が重要なのか
中学校で学ぶ英単語はおよそ1,200語程度です。ところが高校では一気にその倍以上、2,500~3,000語以上の語彙を習得することが求められます。さらに大学入試となると、必要な単語数は5,000語を超えるとも言われています。量だけでなく、質の面でも変化があります。中学英語では「基本的な日常会話に必要な単語」が中心でしたが、高校英語では「抽象的な概念」や「学術的なテーマ」に関する単語が登場します。
たとえば、中学では beautiful(美しい)や family(家族)といった身近な単語が中心でした。しかし高校になると、significant(重要な)、environment(環境)、phenomenon(現象)など、普段の会話ではあまり使わないような単語が頻出します。これらを知らなければ、文章を読んでも内容が頭に入らず、「英語=難しい」という印象だけが強まってしまうのです。
語彙力不足がもたらす「負のスパイラル」
実際、多くの高校生が「英語が苦手」と感じるきっかけは、語彙力不足です。単語がわからない → 長文が読めない → テストの点数が下がる → 自信をなくす → 勉強が後回しになる → さらに語彙が定着しない…といった悪循環に陥ってしまいます。このスパイラルにハマると、どれだけ文法問題集を解いても、成果が見えにくくなります。
保護者としては「文法を勉強させなきゃ」と思いがちですが、実際はまず語彙を固めることが最優先です。土台がしっかりすれば、その上に文法や読解を積み重ねることができ、結果的に効率的な学習につながります。
効率的な単語学習のコツ
単語学習は「覚えてもすぐに忘れてしまう」と感じるお子さんが多いものです。そこで、保護者が知っておくと役立つ学習の工夫を紹介します。
- 反復の回数を増やす
人間の記憶は「一度覚えただけではすぐに忘れる」ようにできています。忘れる前に繰り返すことで、記憶が長期化します。たとえば「1日目に覚えた単語を翌日、3日後、1週間後に復習する」といったサイクルを作ると、定着率が高まります。 - 声に出して読む・書く
単語帳を眺めるだけではなかなか覚えられません。目・耳・口・手を使うことで脳に残りやすくなります。声に出して発音しながら書く、例文を丸ごと音読する、などの工夫が効果的です。 - 例文と一緒に覚える
単語単体で覚えるより、文脈の中で覚えた方が忘れにくくなります。たとえば develop(発展する)なら「Japan has developed rapidly.(日本は急速に発展した)」といった例文を丸ごと覚えると、文法や表現も同時に身につきます。 - アプリやカードを活用する
今はスマートフォンアプリやオンライン教材で効率的に単語学習ができます。スキマ時間にクイズ感覚で使えるため、部活動や通学で忙しい高校生に向いています。保護者も「今日何問やった?」と声をかけやすくなります。
熟語を軽視しない
単語と同じくらい重要なのが熟語です。高校英語では「2語以上の組み合わせで1つの意味を持つ」表現が頻出します。たとえば look up to(尊敬する)、make up for(埋め合わせをする)などです。単語の意味を知っていても、熟語としての意味を知らなければ解けない問題が多く出題されます。熟語は単語以上に「文脈で覚える」ことが効果的です。英文の中で出てきたら、ノートにまとめて繰り返し使う習慣をつけましょう。
保護者ができるサポート
単語学習はどうしても「地味で退屈」と思われがちです。そこで保護者ができるのは、学習の環境を整え、継続を後押しすることです。
- 学習時間を決める(寝る前10分など)
- 目に見える形で成果を記録する(カレンダーに○をつける)
- 1日の学習量を少なく区切る(「1日30語」など)
また、「単語をやりなさい」と声をかけるよりも、「今日はどんな単語を覚えた?」と会話のきっかけにすると、お子さんもポジティブに取り組みやすくなります。
まとめ
高校英語で最初に取り組むべきは、何といっても語彙力です。単語や熟語は決して派手な勉強ではありませんが、確実に英語力を支える「土台」になります。基礎が揺らいでいては、その上に積み重ねる読解やリスニング、文法の力も安定しません。だからこそ保護者としては「まず単語」と割り切り、日々の学習をコツコツとサポートしていくことが大切です。お子さんが「語彙力がついた!」と実感できるようになれば、英語に対する自信も少しずつ戻ってきます。その第一歩を支えてあげることが、保護者にできる最大のサポートなのです。
ステップ2:英文法の基礎復習と応用の理解
高校英語で大きな壁になるのが「文法」です。
「単語さえ覚えれば大丈夫」「読んでいけばそのうち慣れる」という声もありますが、土台となる文法がぐらついていると、長文読解も英作文も伸び悩んでしまいます。特に大学入試では、正確に文の構造を読み解き、文脈に合った形を選べるかどうかが合否を左右します。
そこで大切なのは、まず 中学で学んだ文法のあいまいさをなくすこと、次に 高校で新しく出てくる文法を正しく押さえること です。
1. 中学文法の曖昧さをなくす
多くの高校生が「わかっているつもり」で進んでしまうのが中学英文法です。
例えば以下のようなポイントは要注意です。
- 時制
「現在完了と過去形の違いがあいまい」「進行形と現在形の使い分けが苦手」など、文章の時制感覚が不十分なまま高校に入るケースが多いです。
👉 例:I have lived here for three years. と I lived here for three years. の違いを正しく理解できているか。 - 助動詞
can / may / must の基本用法は理解していても、「過去形での使い方」や「助動詞+have+過去分詞」の表現になると混乱しやすい部分です。
👉 例:He must have been tired.(彼は疲れていたに違いない) - 比較
比較級・最上級の形は覚えていても、「no less than」「as … as possible」といった実際の入試頻出表現は抜けがちです。 - 関係代名詞
who / which / that の基本はできても、「前置詞+関係代名詞」や「関係副詞(where / when / why)」になると理解が薄い生徒が少なくありません。
中学内容を一度総ざらいして、「知識の穴」をつぶすことが最初のステップです。
2. 高校で出てくる主要文法の押さえどころ
高校英語では一気に文法の幅が広がります。その中でも特に入試で問われやすいのが以下の分野です。
- 仮定法
現実と異なることを表す文法で、高校英語の大きなヤマ場です。
👉 例:If I were you, I would study harder.(もし私があなただったら、もっと勉強するのに)
仮定法過去・過去完了・混合仮定法とバリエーションが多いため、段階的に整理して理解することが大切です。 - 分詞構文
文章を簡潔にまとめるための構文で、英文読解でも頻出です。
👉 例:Seen from a distance, the mountain looks beautiful.
「~されると」「~しながら」など文脈で訳し分ける力が求められます。 - 関係詞の発展形
関係代名詞 what(=the thing which)や、複雑な関係代名詞の省略形などは入試の定番です。
👉 例:This is the book I told you about.(これが君に話した本だ) - 準動詞(不定詞・動名詞・分詞)
高校では不定詞の「仮主語・仮目的語」や、動名詞の「動作主の明示」など中学では扱わない内容が加わります。
これらは「長文読解のカギ」となるため、重点的に演習を積む必要があります。
3. 文法定着のステップ:「理解 → 例文 → 問題演習」
文法は「理解したつもり」で止めてしまうと定着しません。以下の流れで学習すると効果的です。
- 理解する
解説を読んで「なぜこの形になるのか」を納得する。丸暗記ではなく“理屈”を意識すること。 - 例文で使ってみる
自分で声に出したり、ノートに例文を作ったりして「知識をアウトプット」する。特にスピーキングやライティングで活用できると記憶が定着します。 - 問題演習で確認する
入試問題やワークを解き、「理解した文法が実際に使えるか」を試す。間違えたら「原因→修正」を繰り返す。
👉 例:
- 仮定法を習った → 自分で例文を3つ作る → センター過去問で出題された問題を解く。
保護者の方へのアドバイス
「文法って暗記でしょ?」と思われる方もいますが、実際は 理解 → 活用 → 演習 の流れを踏まないと伸びません。
もしお子さんが「文法は苦手」と言う場合、ただの丸暗記に偏っているケースが多いです。保護者としては「例文を自分で作ってみた?」「間違えた問題をもう一度やってみた?」と声をかけてあげると、学習のサイクルを正しく回せるようになります。
ステップ3:長文読解力を養う
高校英語の学習で、多くの生徒が直面する最大の壁が「長文読解」です。模試や入試では英文法や単語よりも配点が大きく、合否を左右する力になります。ところが、「単語はそこそこ覚えたのに長文になると全然読めない」「時間が足りずに最後まで解けない」と悩む高校生は少なくありません。
長文読解力を養うには、段階を踏んだトレーニングと戦略的な練習が不可欠です。ここでは、「読み慣れ → スピード強化 → 試験を意識した実戦練習」という流れで整理していきましょう。
1. 長文の読み慣れ:レベルを徐々に上げる
長文読解が苦手な生徒に共通しているのは、「普段から英文を読む量が圧倒的に不足している」ことです。週に数回の授業だけで長文に慣れるのは難しく、毎日の積み重ねが必要です。
- 最初は短めの文章から
教科書や問題集の150〜200語程度の英文を、辞書を使いながら丁寧に読む。知らない単語は文脈から推測してみる。 - 徐々に文章量を増やす
慣れてきたら400語程度の長文へステップアップ。ここで大切なのは「完璧に訳す」ことではなく、「大意をつかめるか」に重点を置くことです。 - テーマの幅を広げる
入試英語では科学・環境・歴史・文化など幅広い分野の英文が出題されます。苦手分野を放置せず、さまざまなジャンルの文章を読むことが必要です。
👉 保護者としてできる支援は、「毎日少しでも英文を読む習慣をつくれているか」を見守ることです。「今日はどんな英文を読んだの?」と声をかけるだけでも、取り組みを継続する後押しになります。
2. 読解スピードをどう鍛えるか
模試や入試で時間が足りなくなる生徒は多いですが、それは「読むスピード」を鍛えていないことが大きな原因です。
- スラッシュリーディング
英文を意味のかたまりごとに区切って読む練習法です。
例:I / found it difficult / to finish the task / in time.
(私は/難しいと思った/その課題を終えるのは/時間内に)
語順通りに理解する習慣をつけると、返り読みせずに読めるようになります。 - 音読トレーニング
声に出して読むことで、リズムよく英文を処理できるようになります。発音は完璧でなくてもよく、音声をまねしながらリズムを体に染み込ませるのが目的です。 - 時間制限をつけた多読
例えば「5分でどこまで読めるか」を試してみると、スピードが意識できるようになります。最初は精読、次に速読と、読み方を使い分ける練習も大切です。
👉 保護者は「音読してる声が聞こえてきたらOK」と考えるくらいがちょうどいいサポートです。本人にとっても「音読は家庭でもできる」という安心感につながります。
3. 時間配分と試験形式を意識した練習
最後に、入試や模試を見据えた実戦的な練習です。
- 過去問・模試形式の問題を解く
実際に80分で解答する練習を重ねることで、「時間配分の感覚」が養われます。 - 解答順を工夫する
「最初の長文で時間を使いすぎて後半が解けない」という失敗はよくあります。生徒によっては「設問の読みやすい問題から解く」「要旨把握問題は後回しにする」など、戦略的に順番を変えると効率が上がります。 - 復習は必ず“設問と根拠”をセットで確認
「なぜその選択肢が正解なのか」を英文のどこに根拠があるのか確認しないと、読解力は伸びません。復習に時間をかけるほど力になります。
👉 保護者の方は「模試の点数」だけで一喜一憂するのではなく、「時間配分を意識して解けたか」「復習にどれくらい時間をかけたか」に目を向けていただくと、お子さんも成長のプロセスを感じやすくなります。
まとめ
長文読解力は一朝一夕では身につきません。
- 短い英文から慣れること
- スピードを意識した読み方の訓練
- 試験本番を想定した練習
この3つを繰り返すことで、「最後まで読み切れない」「設問の意味がつかめない」という壁を越えていけます。保護者としては、勉強方法を細かく指導するよりも「毎日の継続」と「復習の質」に関心を持って寄り添うことが、一番のサポートになります。
ステップ4:リスニングと発音/聞く力を育てる
「英語の長文は読めるのに、リスニングになると全然聞き取れない」──高校生からよく聞く悩みです。大学入試においてはリスニングの配点が年々高まり、共通テストではリーディングと同じ100点満点。英語力の半分は「聞く力」といっても過言ではありません。
ただし、リスニング力は一夜漬けで身につくものではありません。日々の生活の中で「英語を聞く耳」を育て、発音とリズムに慣れていくことが大切です。
1. 英語耳を育てるためのインプット
日本人が英語を聞き取りにくいのは、音そのものに触れる時間が圧倒的に少ないからです。教科書の英文を目で追うだけでは、実際の会話スピードや発音の省略には対応できません。
- 音声教材を繰り返し聞く
学校や塾で使っているリスニングCDやアプリを「1日5分でも毎日」聞く。最初は意味がわからなくても、とにかく音に慣れることが大切です。 - 動画やポッドキャストを活用
YouTubeの教育チャンネル、TED、NHKの「ニュースで英会話」など、無料で良質な教材が手に入ります。最初は字幕付きで視聴し、慣れてきたら字幕なしにも挑戦。 - 同じ素材を何度も聞く「多聴と精聴」
広くたくさん聞く多聴と、同じ文章を繰り返し聞き込む精聴を組み合わせるのが効果的です。
👉 保護者の方は「今日どんな英語を聞いたの?」と軽く聞いてみるだけで、継続のモチベーションをサポートできます。
2. 発音・リズムを真似る練習
リスニング力を高めるには、「発音できる音は聞き取れる」という原則を意識することが重要です。
- シャドーイング
音声を流しながら、数秒遅れて同じように発音する練習。リズムやイントネーションが自然に身につきます。 - リピーティング
短いフレーズを区切って聞き取り、そっくりに真似する方法。聞いた音をそのまま再現する力を養います。 - リエゾン(音のつながり)に慣れる
英語は単語と単語がつながり、音が省略されることが多いです。たとえば、 - want to → wanna
- going to → gonna
こうした自然な発音に慣れると、一気に聞き取りが楽になります。
👉 お子さんがリスニング教材を口ずさんでいたら、それは力がついているサイン。保護者としては「楽しそうに英語を口にしているか」を見守るくらいがちょうどいいです。
3. 日常に英語を取り入れる工夫
リスニングは机の前だけでやる必要はありません。日常の中に「英語を聞く時間」を自然に組み込むと、継続が楽になります。
- 通学時間に英語音声
電車やバスでの移動時間に英語ポッドキャストを流す。1日30分の積み重ねが大きな差になります。 - 家事や運動中の“ながら聞き”
洗い物や散歩の最中に英語を流すと、学習のハードルが下がります。 - 英語字幕の映画やドラマ
休日に英語字幕で映画を楽しむのも効果的。ディズニーや海外ドラマは教材としても優秀です。 - 短いルーティンを決める
「寝る前に5分音声を聞く」「朝起きたら1フレーズ音読する」など、習慣に組み込むと定着します。
👉 保護者の役割は「環境づくり」。Wi-Fiやアプリを整えてあげるだけでも、学習の継続率が上がります。
まとめ
リスニング力を高めるためには、
- 毎日のインプットで“英語耳”をつくる
- 発音やリズムを真似てアウトプットする
- 日常生活に自然に英語を取り入れる
この3つのステップが欠かせません。保護者としては「どれだけ聞き取れたか」よりも、「今日も英語を聞く時間を持てたか」に注目し、お子さんを支えてあげるとよいでしょう。
ステップ5:英作文(書く力)・スピーキングの育成
英語学習において「読む」「聞く」力に比べて軽視されがちなのが、「書く」「話す」といったアウトプットの力です。ところが、大学入試では自由英作文や要約、スピーキング試験を課す大学も増えており、アウトプット力が求められる場面は確実に広がっています。
お子さんが「英語は読めるけれど、書いたり話したりするのは苦手」と感じているなら、早めに少しずつ練習を積むことが大切です。ここでは、英作文とスピーキングを効果的に育てる方法を整理していきます。
1. 表現を真似ることから始める:例文暗記・定型表現
「英作文はゼロから考えて書くもの」と思ってしまうと、非常にハードルが高く感じられます。実際には、多くの英作文は 決まった表現の組み合わせ で成立しています。
- 頻出フレーズを暗記する
例: - I think that …(私は〜だと思う)
- It is important to …(〜することは大切だ)
- One of the reasons is that …(理由の一つは〜だ)
これらを「自分の武器」として持っておけば、英作文にすぐ活かせます。
- 教科書や模範解答の英文を真似る
最初は「コピペ」感覚でも構いません。使える表現をストックしていくうちに、少しずつアレンジできるようになります。
👉 保護者としては「今日はどんなフレーズを覚えたの?」と聞いてあげるだけでも、学習の定着を助けられます。
2. 英作文の書き方のコツ:構成・論理・語彙選び
入試の自由英作文では「文法ミスが少ない」ことに加えて、「筋道立てて書けるか」が大きな評価ポイントになります。
- 構成を意識する
- 意見(結論):I agree / disagree with the idea.
- 理由①:First, …
- 理由②:Second, …
- まとめ:Therefore, …
この流れを意識すれば、論理的な文章になります。
- 語彙はシンプルでOK
難しい単語を使おうとすると、かえって不自然な英文になりがちです。むしろ「中学レベルの単語を正しく使いこなす」方が評価されます。
👉 × sophisticated vocabulary(背伸びして使う)
👉 ○ easy to understand words(誰でもわかる単語で表現) - ミスを恐れない
小さな文法ミスがあっても、伝えたい内容が明確なら高評価を得られるケースは多いです。「とにかく書いてみる」経験が上達につながります。
3. スピーキング練習の機会を増やす
日本の学校教育では、スピーキングの機会がまだまだ限られています。そのため、意識的に場をつくることが重要です。
- 学校の発表やスピーチを活用
授業でのプレゼンや暗唱発表は、実は貴重なアウトプットの場。準備を丁寧にすることで自信がつきます。 - 塾や英会話教室での演習
学習塾や英会話スクールの「英作文&スピーキング演習」クラスを利用するのも効果的。特に受験を意識する高2・高3生には強い武器になります。 - 家庭での簡単な会話
保護者が英語に自信がなくても、「今日1日どうだった?」を英語で聞くだけでもトレーニングになります。例えば "How was your day?" と投げかけるだけで、子どもは自然に返事をしようとします。
👉 ポイントは「文法の正しさより会話が続くこと」。最初は片言でもOKです。
まとめ
英作文とスピーキングの力は、インプットだけでは伸びません。
- 表現を真似てストックすること
- 構成や語彙を意識してシンプルに書くこと
- 発表や会話の機会を増やして実践すること
このサイクルを回すことで、「書けない」「話せない」という壁を超えることができます。保護者としては「間違いを指摘する役」ではなく、「話してくれてうれしい」という雰囲気づくりが一番のサポートになります。
ステップ6:総合演習と模試対策(実戦力を仕上げる)
高校英語の学習も中盤を過ぎると、文法や単語、長文読解、リスニング、英作文といった各分野の基礎はだいたい身についてきます。しかし、入試で本当に点数を取るためには、これらの力を 「総合的に使いこなす力」 が必要です。ここで重要になるのが、総合演習と模試対策です。模試や過去問を通して、入試本番を意識した実戦力を養っていきましょう。
1. 総合演習の重要性
総合演習とは、今まで学んだことをバラバラではなく、一つの文章や問題で総合的に使う練習です。例えば長文読解の中には文法問題、語彙問題、内容把握問題、英作文問題が混在しています。
- 弱点を統合的に補強できる
単独の文法や単語演習だけでは見えなかった課題も、総合演習では明確になります。「文法はわかるのに長文では間違える」「単語は知っているのに、速読すると見落とす」といった弱点を洗い出せます。 - 試験本番の形式に慣れる
時間制限の中で解く経験は、精神的な余裕につながります。時間配分を意識しながら問題を解くことで、試験中に焦って間違えるリスクを減らせます。
総合演習を繰り返すことで、知識を「使える力」に変えていくことができます。
2. 模試対策の進め方
模試は単なる「学力チェック」ではなく、戦略的に活用することで学習効率が格段に上がります。
- 過去問・模試を時間を計って解く
実際の試験形式と同じ条件で解くことが大切です。解く際には、「時間配分」「解く順番」「どの問題で時間を使うか」を意識します。 - 復習は“なぜ間違えたか”を分析する
間違えた問題をただ解き直すだけでは不十分です。
- どの知識が足りなかったか
- どの解法手順でつまずいたか
- 時間配分は適切だったか
これらを整理することで、次の演習に活かせます。
- 得意・不得意を見える化する
模試の結果を科目別、単元別に整理すると、「どの分野を重点的に復習すべきか」が明確になります。特に高校2年生や3年生は、不得意分野を残しておくと入試直前で焦る原因になります。
3. 実戦力を仕上げる学習サイクル
総合演習や模試を活かすには、学習サイクルを意識することが重要です。
- 演習する
過去問や模試形式の問題を時間を計って解く。 - 分析する
間違えた箇所を分類(文法・語彙・読解・リスニング・英作文)し、原因を整理。 - 改善する
原因に応じた学習を行い、弱点を補強。例:文法問題は問題集で追加演習、読解は音読やスラッシュリーディングで強化。 - 再演習する
再び同レベルの総合問題や模試に挑戦し、前回の失点が減ったか確認。
このサイクルを繰り返すことで、単なる暗記ではなく、入試で実際に点数を取れる力が身についていきます。
4. 保護者としてできるサポート
- 学習計画の確認
模試前後に「何を復習すべきか」を一緒に整理する。 - 精神面の支援
模試で思うように点が取れなくても焦らず、次の改善策を考える習慣をつける。 - 環境づくり
集中できる学習環境や、音読やリスニング用の教材を整えるだけでもサポートになります。
まとめ
総合演習と模試対策は、これまでの学習の「確認」だけでなく、「実戦力を仕上げる最後のステップ」です。
- 総合演習で知識を使える力に変える
- 模試で弱点を見える化し、戦略的に復習する
- 学習サイクルを回し、試験本番に備える
この3点を意識すれば、高校英語の学習は「点数につながる実力」へと進化します。保護者は結果だけで一喜一憂するのではなく、改善のプロセスを見守ること が最大の支援になります。
高校英語は、単なる知識の積み上げではなく、「使える力」を育てることが重要です。6つのステップを順に進めることで、文法や単語の理解から、読解・リスニング・英作文・スピーキングまで、バランスよく力を伸ばすことができます。
保護者としては、点数や結果だけに目を向けるのではなく、毎日の学習の取り組みやプロセスを見守り、環境づくりや声かけでサポートすることが大切です。焦らず、少しずつ力をつけていく経験が、入試本番での自信につながります。
この6ステップを参考に、お子さんと一緒に「できること」を少しずつ積み重ね、確実な高校英語力を育てていきましょう。