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「大学受験の勉強、どう支える?保護者にできる7つのサポート」

「大学受験の勉強、どう支える?保護者にできる7つのサポート」

はじめに:大学受験に向けた勉強の重要性

― 大学受験の現状と勉強の必要性/保護者としてのサポートの役割 ―

「うちの子、ちゃんと勉強できてるのかしら」「このままで志望校に受かるのかな」。高校生を子に持つ保護者の皆さまなら、一度はこんな不安を感じたことがあるのではないでしょうか。高校生活も折り返しに入ると、部活動や行事と並行して、いよいよ本格的な「受験モード」へと突入していきます。大学受験は本人の努力が何よりも大切ですが、実は保護者のサポートも、結果を大きく左右する重要な要素なのです。

現在の大学受験は、ひと昔前とは大きく様変わりしています。かつてはセンター試験一本で勝負を決めるイメージがありましたが、今では「共通テスト」をはじめ、推薦入試や総合型選抜(旧AO入試)など、多様な入試方式が存在します。それぞれに求められる力が異なり、早い段階からの対策が必要とされるため、情報戦とも言える状況になっています。

また、受験の競争も年々厳しくなってきています。少子化が進んでいるとはいえ、人気大学への集中は根強く、いわゆる“安全圏”とされていた大学でも倍率が上昇傾向にあることも珍しくありません。こうした中で志望校に合格するためには、早期からの戦略的な学習が欠かせません。何となく勉強するのではなく、「自分には何が足りないか」「どうすれば点数を伸ばせるか」を分析しながら、日々の学習に取り組む姿勢が求められるのです。

ただ、高校生がそこまで計画的に、自己分析をしながら学習を進めるのは簡単なことではありません。学校の授業、定期テスト、部活動などに追われ、気がつけば「あっという間に受験直前!」というケースも少なくないのが現実です。ここで大切になるのが、保護者の皆さまの役割です。

もちろん、受験勉強そのものはお子さんが主体的に取り組むべきことです。しかし、親としてできることは決して少なくありません。たとえば、勉強に集中できる環境を整えてあげたり、日々の体調管理や食事に気を配ったり、メンタルの支えとなる声かけをしたり。些細に思えることでも、お子さんのモチベーションや安心感につながる大きな力になります。

また、受験情報を一緒に整理したり、塾や予備校の選び方を話し合ったりといった「伴走者」としての関わりも大切です。最近では進路や勉強法の相談を親に持ちかける高校生も増えており、信頼関係のある親子ほど、受験期をスムーズに乗り越える傾向があります。子どもは子どもなりにプレッシャーを感じながら戦っています。そんなとき、身近に「自分の味方がいる」と感じられるだけで、気持ちはずいぶん軽くなるものです。

とはいえ、何か特別な知識や指導力が必要なわけではありません。むしろ「頑張ってるね」「いつでも相談してね」といった、さりげない言葉の積み重ねが、長い受験期間においてはとても重要なのです。焦らせたり、プレッシャーをかけたりするのではなく、温かく見守りつつ、必要に応じて背中を押してあげる――。そんな保護者の姿勢が、最終的にはお子さんの自主性や自信にもつながります。

このコラムでは、そんな「保護者としてできる受験サポート」に焦点を当てながら、勉強法や生活習慣、モチベーションの保ち方など、多角的に情報をお届けしていきます。お子さんが安心して受験に臨み、納得のいく進路を選べるように、ぜひ親子で二人三脚の受験生活を始めてみませんか。

第1章:効果的な勉強法とは

― 計画的な学習スケジュールの立て方/科目別の勉強法のポイント/自習と塾の活用バランス ―

大学受験を成功させるためには、「がむしゃらに勉強する」だけでは足りません。限られた時間をどう使い、どう伸ばすかがカギになります。そこで重要になるのが、効果的な勉強法です。勉強の「質」を上げることで、「量」だけに頼らない、メリハリのある学習が実現できます。

まず最初に大切なのは、学習スケジュールの立て方です。受験までの時間は誰にとっても平等ですが、その使い方で結果は大きく変わります。計画を立てずに思いつきで勉強していると、どうしても好きな科目に偏ったり、苦手な分野を避けてしまいがちです。そこで、保護者としてできるサポートのひとつが、「一緒に計画を立てること」です。

たとえば、週ごとに「英語は長文読解、数学は応用問題、世界史は一問一答」というふうに、具体的な目標を設定すると、日々の学習に目的が生まれます。さらに、「どこまで進んだか」を可視化できる表やアプリなどを活用すれば、達成感も感じやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。

次に、科目別の勉強法にも少し目を向けてみましょう。たとえば英語は、「単語力」が基礎になります。高校生の中には、文法問題や長文読解に取り組む前に、語彙力でつまずいてしまうケースも少なくありません。保護者としては、「今日はどんな単語を覚えたの?」といった日常的な会話の中で、お子さんの学びを確認してあげるだけでも大きな支えになります。

数学の場合は、「わかったつもり」になりやすい教科の代表格です。問題の解き方を覚えるだけでなく、「なぜそうなるのか」を理解することが成績アップの近道。解いた問題に対して「なぜこうなったの?」と問いかけてみるのも良い刺激になりますし、理解があいまいな部分に気づくきっかけにもなります。

また、暗記科目とされる歴史や生物などは、単に覚えるだけではなく「流れ」を理解することが重要です。年表を一緒に作ったり、ストーリー仕立てで覚えたりと、工夫次第で記憶の定着率もぐっと上がります。

そして、多くのご家庭で悩みの種になりがちなのが、塾との付き合い方です。今はさまざまな形態の塾があり、集団授業から個別指導、オンラインまで幅広い選択肢があります。保護者として大切なのは、「塾に通っているから安心」と思い込まず、自習とのバランスを見守ることです。

塾はあくまで「理解を助ける場」であり、「自分で考えて、覚えて、解く力」を養うのは自習の時間です。塾から帰ってきたあとにその日の内容を復習したり、次の授業に向けて予習をしたりと、自習と塾をつなぐ意識があるかどうかが、学力の伸びを左右します。

そのためにも、保護者ができるのは「今日の塾、どうだった?」と一声かけること。「難しかった」「前より分かるようになった」と、お子さんの口から出てくる言葉には、学習状況のヒントがたくさん詰まっています。

また、塾の先生や学校の先生との定期的なコミュニケーションも、保護者ならではのサポートです。学習の進み具合やつまずきやすい部分を共有しておくと、家庭での声かけや学習時間の確保に、より具体的な方向性が持てるようになります。

受験勉強は、一人で戦うにはあまりにも長く、精神的な負担も大きなものです。けれど、しっかりと計画を立て、自分に合った勉強法を見つけて、まわりの大人がサポートできれば、それはお子さんにとって大きな武器になります。

勉強法に“正解”はありませんが、「計画的に」「科目に合わせて」「自習と塾のバランスを意識して」という基本の柱を持つことは、どんな受験生にも共通する成功への近道です。そして何より大切なのは、保護者の皆さんが「いつでも味方だよ」と、寄り添い続けることかもしれません。

第2章:モチベーションの維持方法

― 目標設定の重要性/成功体験の積み重ね/保護者からの励ましとサポート ―

「やる気が出ない」「今日はなんとなく勉強に集中できなかった」。受験期の高校生からよく聞こえてくるこのセリフ。どれだけ綿密な学習計画を立てたとしても、モチベーションが低下してしまえば、その通りに進めるのは難しくなります。勉強を継続していくためには、気持ちを保ち続ける工夫が必要です。そしてこの“やる気の維持”にも、保護者の皆さんができるサポートがあります。

まず、モチベーションを高めるためには、「何のために頑張るのか」という明確な目標の設定が欠かせません。志望校がはっきりしていれば、その大学のパンフレットを一緒に見て「こんなキャンパスライフを送りたいね」と話すだけでも、本人の気持ちは自然と前向きになります。まだ志望校が定まっていない段階でも、「将来やってみたいこと」「興味のある分野」について対話することで、目指すべき方向性が見えてくることもあります。

目標を「見える化」するのも効果的です。たとえば、部屋に志望校の名前を貼ったり、勉強机の前に「○月の模試で偏差値60を目指す」といった目標を書いた紙を貼るだけでも、意識が変わってきます。ふと疲れたときでも、「自分は何を目指しているのか」が視覚的に思い出せる環境をつくることが、モチベーションの維持につながります。

次に意識したいのが、成功体験の積み重ねです。大きな目標ばかりを見ていると、「全然届かない」「まだまだ足りない」と感じてしまい、かえってやる気を失ってしまうことがあります。そこで有効なのが、「小さな達成感」を日々感じられるようにすること。

たとえば、「今週は英単語を100個覚えた」「数学の応用問題が1問解けた」など、日々の小さな進歩を認識することで、「自分は成長している」という実感が持てるようになります。そしてこの実感こそが、次のやる気を生み出す原動力になるのです。

保護者としては、こうした小さな頑張りを見逃さず、「よくやったね」「この前より成長してるね」と声をかけてあげるだけでも、お子さんの気持ちはぐっと前向きになります。褒めることに抵抗がある方もいるかもしれませんが、完璧でなくても、努力の過程を認めることが何よりの応援になります。

また、受験勉強のモチベーションは、本人の「気持ちのコンディション」に大きく左右されます。疲れがたまっていたり、睡眠不足が続いたりすると、集中力も気力も低下しがちです。そんなときこそ、保護者の皆さんが気づいてあげることが大切です。いつもより元気がない、食欲が落ちている、寝不足気味…そんなサインを見逃さず、「今日は少し早めに寝たら?」と声をかけてあげるだけでも、本人は「気にかけてくれている」と感じて安心します。

もうひとつ大切なのが、「比較しないこと」です。友達の成績や模試の判定に一喜一憂しやすい時期ですが、他人との比較ばかりになると、自分を見失ってしまいがちです。「○○ちゃんはA判定だったのに、うちは…」などの言葉は、良かれと思ってもプレッシャーになることがあります。

それよりも、「前回より偏差値が上がってるね」「苦手だった英語、頑張ってるね」と、過去の自分との比較で褒めることが大切です。受験はマラソンのようなもの。スタートが遅くても、コツコツと努力を重ねてゴールを目指せばいいのです。

また、ときには息抜きも必要です。ずっと勉強漬けでは、どんなに頑張っている子でも疲れてしまいます。休日にちょっとだけ好きなスイーツを買って一緒に食べたり、散歩しながら何気ない話をしたり、そんなささやかな時間がリフレッシュの効果をもたらします。保護者にとっては些細なことでも、お子さんにとっては「気持ちを切り替える大切な時間」になっているかもしれません。

モチベーションは、放っておけば自然と上がるものではありません。日々の声かけや関わりの中で、少しずつ整えていくものです。保護者の皆さんができるのは、「頑張りなさい」と言うことではなく、「あなたの頑張り、ちゃんと見てるよ」と伝え続けること。受験という長い道のりを、焦らず、比べず、寄り添いながら一歩ずつ進んでいきましょう。

第3章:模試と過去問の活用法

― 模試の結果の読み解き方/過去問演習のタイミングと方法/復習の重要性 ―

受験勉強が本格化してくると、避けて通れないのが模擬試験(模試)と過去問演習。どちらも受験対策の柱となる大切なツールですが、「模試の判定に一喜一憂してしまう」「過去問はいつから始めるべき?」と悩むご家庭も多いのではないでしょうか。ここでは、模試と過去問をどのように活用すればよいのか、そして保護者としてどんなサポートができるかをお伝えします。

まずは、模試の結果の見方について。模試と聞くと、真っ先に目が行くのは「A判定」「C判定」などの合否判定ですが、実はそれだけで一喜一憂するのは少し危険です。判定はあくまで目安であり、特に高1・高2の段階ではまだ学習が不十分な分野も多く、厳しい評価になるのは珍しくありません。

模試の本当の価値は、「今の自分の弱点を知ること」にあります。たとえば、英語の長文で点が取れていないのか、数学の応用問題で時間が足りなかったのか、国語の記述で減点されているのか――そうした“具体的なつまずきポイント”を見つけ出すことが重要なのです。

保護者としては、「結果どうだった?」と聞く代わりに、「どこが難しかった?」「次はどこを重点的に復習する?」と声をかけてみてください。お子さんが模試の結果と向き合い、自分なりに分析しようとするきっかけになります。もしお子さんが模試の答案や解説を読み返していないようなら、「せっかく受けたんだし、見直してみようか」と優しく促すのも効果的です。

また、模試の「平均点」や「偏差値」は、自分の立ち位置を知るうえで役立ちます。たとえば偏差値が60であれば、同じ模試を受けた生徒の中で上位16%にいるという意味。こうした情報を冷静に受け止め、前回と比べてどう伸びているか、どこに課題があるかを一緒に確認していけると良いですね。

次に、過去問の活用法について。過去問は言うまでもなく、志望校の出題傾向や難易度を知るうえで非常に重要です。ただし、取り組む時期とやり方には注意が必要です。

高1・高2の段階ではまだ基礎力が十分に固まっていない場合が多く、いきなり過去問に挑戦しても太刀打ちできないことがあります。逆に高3の夏~秋ごろからは、志望校の問題傾向を意識した学習に切り替えるタイミング。この時期になると、過去問の演習が「合格力」を育てる鍵になります。

目安としては、高3の夏以降に本格的に取り組み始めるのが理想です。最初は「何も分からなかった…」と落ち込むかもしれませんが、それも大切な気づきです。過去問を解くことで、「今の自分に何が足りないか」が明確になり、日々の勉強に具体的な目標が生まれます。

ここで大切なのが、“解きっぱなし”にしないこと。過去問の本当の価値は「復習」にあります。なぜ間違えたのか、どの知識が不足していたのか、時間配分は適切だったか――こうした振り返りを丁寧に行うことで、同じミスを繰り返さない力が身についていきます。

保護者としては、「何点だった?」と結果だけを聞くのではなく、「この問題、どうだった?」「難しかったところはどこ?」と話を聞いてあげるだけでも、お子さんの振り返りの手助けになります。また、過去問を何年分やったかをカレンダーに記録するなど、学習の“見える化”をサポートしてあげるのもモチベーションにつながります。

さらに、赤本(大学別過去問題集)などは、大学ごとに傾向が大きく異なるため、複数年分を解いて「出題傾向」や「頻出テーマ」に慣れておくことが重要です。たとえば、ある大学では英語の長文で環境問題がよく出題される、数学では図形問題が頻出――といったように、大学ごとの“クセ”をつかむことが合格への近道になります。

模試と過去問は、「今の自分」と「目指すレベル」の“距離”を測るためのツールです。どちらも受けただけ、解いただけでは効果は半減してしまいます。大切なのは、結果をどう活かすか。そしてその活かし方を、保護者の皆さんがそっと支えてあげることです。

お子さんにとって、成績の浮き沈みは精神的にも大きな負担になります。そんなとき、「結果も大事だけど、それ以上に努力を見ているよ」と伝えてあげてください。その一言が、次の模試や過去問への前向きな姿勢を生む、大きな力になるはずです。

第4章:志望校選びのポイント

― 学力・興味関心・将来性のバランス/オープンキャンパスの活用/現役合格を目指す戦略 ―

大学受験において、「どの大学・学部を目指すか」という志望校選びは、進路を大きく左右する非常に重要なステップです。お子さんの希望を尊重しながらも、現実的な判断も必要であり、保護者としても悩ましい場面が多いものです。ここでは、志望校を選ぶ際のポイントや、保護者がどのように関われるかについてお伝えしていきます。

まず前提として、志望校を選ぶうえで意識したいのが、「学力」「興味・関心」「将来性」のバランスです。

「学力」は言うまでもなく、今の学力で目指せるかどうかという視点。ただし、現時点で届かないからといって候補から外す必要はありません。「まだ時間があるからチャレンジしたい」とお子さんが思っているなら、応援してあげましょう。逆に、過度なチャレンジ校ばかりだと合格可能性が不安定になるため、安全校・実力相応校・チャレンジ校のバランスを取ることも大切です。

次に「興味・関心」。大学は専門性の高い学びの場ですので、学びたい内容と学部・学科の内容がマッチしているかが非常に重要です。最近では「○○学部でもプログラミングが学べる」「国際系学部でも経営学を学べる」など、学部名だけでは分かりにくいことも多いので、大学の公式サイトやパンフレットを活用して、カリキュラムやゼミの内容までしっかりチェックすることが重要です。

「将来性」については、卒業後の進路(就職・資格・大学院進学など)を見据えた視点が必要です。たとえば、医療系や教育系、法学系などは、国家資格や専門職との結びつきが強いため、大学選びの段階からある程度キャリアを意識する必要があります。とはいえ、高校生のうちに将来を完全に決める必要はありません。**「どんな可能性が広がるか」**を一緒に考えることが、保護者としてできるサポートです。

そしてもう一つ、志望校選びの過程でとても効果的なのが、オープンキャンパスの活用です。パンフレットやネットの情報だけでは分からない、キャンパスの雰囲気や学生の様子、通学時間や周辺環境などを実際に体験できる貴重な機会です。

できれば、一緒に参加してみるのがおすすめです。親子で見学したあと、「あの大学どうだった?」「○○学部の説明、分かりやすかったね」と感想を共有することで、お子さんの気持ちを引き出しやすくなります。意外と「施設がきれいだった」「先輩たちが楽しそうだった」という理由が、大学に対する好印象につながることもあるのです。

また、オープンキャンパスでは実際の授業の体験ができたり、現役大学生の話が聞けたりと、学びのイメージをつかむには最適です。参加には予約が必要な場合もあるので、情報を早めにチェックして、スケジュールに組み込んでおきましょう。

次に、「現役合格を目指す戦略」についても触れておきましょう。浪人という選択肢ももちろんありますが、可能であれば現役合格を目指すメリットは大きいです。なぜなら、高校生活というペースの中で勉強に取り組んだほうが、生活リズムや環境が整っているからです。また、現役生は部活動や学校行事などとの両立もあり、「時間が限られている」という焦りが、逆に集中力を高める材料にもなります。

保護者としては、「浪人してもいいじゃない」と声をかけることが悪いわけではありませんが、それが逆に“逃げ道”になってしまうケースもあるため、お子さんの意志や覚悟をしっかり確認したうえで、応援していくことが大切です。

そして、複数校を受験する「併願校」の選び方にも注意が必要です。たとえば、同じ学力帯の大学でも、出題傾向や科目がまったく違うと対策が分散してしまい、効率が下がってしまいます。可能であれば、受験科目が似ている大学を選ぶ試験日がかぶらないようにするなど、実務的な観点からもプランを立てていく必要があります。

このように、志望校選びは「どこに行くか」だけでなく、「なぜそこを目指すのか」「どうやって合格まで導くか」という視点もあわせて考えることが大切です。保護者の皆さんにできるのは、答えを決めてあげることではなく、お子さんが自分の意思で選べるように導くことです。

一緒に悩み、一緒に調べて、背中を押してあげる。そんな関わりが、お子さんの大学選びを後悔のないものにしてくれるはずです。

第5章:生活習慣と健康管理

― 規則正しい生活の重要性/食事と睡眠のバランス/ストレスの管理とリフレッシュ方法 ―

大学受験という長期戦を乗り切るためには、勉強の内容や学習計画だけでなく、日々の生活習慣を整えることがとても重要です。どんなに優れた参考書や講師に出会ったとしても、体調を崩してしまったり、気力が続かなかったりしては、本来の力を発揮することはできません。

まず意識しておきたいのが、規則正しい生活のリズムです。

高校生ともなると、自分で生活を管理しているように見えても、受験が近づくにつれ、夜遅くまでの勉強や朝寝坊など、どうしても生活が乱れがちになります。特に直前期には「夜の方が集中できる」「時間が足りない」と、つい深夜まで机に向かってしまうことも。

しかし、体内時計が乱れると、集中力や記憶力、免疫力までも低下してしまうというのは、数々の研究でも明らかになっています。実際、本番の試験は朝から行われるケースがほとんどですから、生活リズムを「試験に合わせた朝型」に整えておくことは、合格への土台づくりと言っても過言ではありません。

保護者としては、「早く寝なさい」「起きなさい」と言いたくなるところですが、頭ごなしに指示するよりも、「試験当日、頭がスッキリ動くように、今から少しずつ朝型にしておこうか」と目的を共有する形で提案すると、本人も納得しやすくなります。

次に大切なのが、食事と睡眠のバランスです。

受験期はどうしても頭を使う機会が多く、エネルギー消費も激しくなります。脳の働きを支えるためには、栄養のある食事が不可欠です。特に意識したいのは、以下のような栄養素:

  • 炭水化物(ごはん・パン・麺類):集中力を保つためのエネルギー源
  • タンパク質(肉・魚・卵・大豆製品):脳の情報伝達に関わる神経をサポート
  • ビタミン・ミネラル(野菜・果物・海藻類):体調管理やストレス緩和に有効
  • DHA・EPA(青魚など):記憶力や思考力を助ける働きがあるとされています

とはいえ、栄養バランスばかりにこだわりすぎると、保護者の方が疲れてしまうかもしれません。毎日完璧を目指す必要はなく、「できる範囲でちょっと意識する」くらいがちょうどいいでしょう。

また、睡眠も非常に大切です。記憶の定着や疲労回復は、睡眠中に行われています。とくに深い睡眠(ノンレム睡眠)の時間帯に、その日に学んだ内容が脳内で整理されるため、十分な睡眠を取ることは、効率の良い学習にも直結します。

「早く寝なさい」と繰り返すよりも、「寝ることも立派な勉強のひとつだよ」「寝てる間に記憶が定着するって知ってた?」と、睡眠の効果を前向きに伝える声かけが、自然な生活改善につながります。

そして最後に、忘れてはならないのが、ストレスの管理とリフレッシュの方法です。

受験勉強は、どうしてもプレッシャーや不安と隣り合わせです。「このままで本当に大丈夫かな」「周りに遅れてる気がする」など、本人は日々さまざまなストレスを感じています。とくに成績が思うように伸びない時期や模試の結果が振るわなかったときなど、落ち込むこともあるでしょう。

そういう時に保護者ができることは、結果ではなくプロセスを見て励ますことです。「この間、〇〇の勉強ちゃんとやってたの知ってるよ」「地道にやってるの、えらいね」と、日々の努力を認める一言が、子どもの心をふっと軽くします。

また、リフレッシュの時間も意識的に取り入れたいところです。たとえば、

  • 好きな音楽を聴く
  • 少し散歩に出る
  • 軽い運動やストレッチをする
  • 好きなアニメやドラマを1話だけ見る

など、「短時間でも気分を切り替えられる方法」を一緒に探してみるのもおすすめです。無理に「勉強しなさい」と言うよりも、「ちょっと体動かしてリフレッシュしたら、また集中できるかもね」と声をかける方が、子ども自身のモチベーションにもつながります。

受験期の生活は、単に“我慢の連続”にしてしまうと、心も体も持ちません。メリハリをつけて生活することが、実は一番の効率アップ法でもあります。

家庭の中で「無理せず、でも着実に」がベースにあると、お子さんは安心して前に進むことができます。そしてその安心感こそが、最後まで走り抜けるエネルギーの源になるのです。

おわりに:共に歩む受験の道

― 受験は家族の共同プロジェクト/成功への鍵は継続と支援 ―

大学受験は、単なる学力試験ではありません。数ヶ月、あるいは数年にわたって続く長い挑戦であり、その過程でお子さんは大きく成長していきます。そして、その道のりを一番近くで見守り、支えているのが、他でもない保護者の皆さんです。

「受験」というと、どうしても本人の頑張りにばかり目が向きがちですが、実はこれは**家族全体の“共同プロジェクト”**ともいえるものです。

日々の生活リズムを合わせ、学校説明会や模試の予定を一緒に管理し、志望校選びで悩み、体調に気を配り、精神面を支える。目立たないけれど、どれも欠かせない役割です。保護者の関わりが、お子さんの安心と自信につながっていることは間違いありません。

受験生活の中では、思うように成績が伸びなかったり、志望校を変える決断を迫られたり、親子で意見がぶつかることもあるでしょう。そんなとき、つい「なんでちゃんとやらないの?」「もっと頑張らないとダメじゃない」と言いたくなる場面もあるかもしれません。でも、そうした言葉はお子さんにとって、プレッシャーや孤独感につながることがあります。

大切なのは、「味方でいること」です。良いときだけでなく、つまずいたときにこそ「一緒に考えよう」「どうすれば良いか一緒に探そう」という姿勢が、お子さんの心の支えになります。
親が全面的にコントロールする必要はありません。ただ、いつでも相談できる安心感を与えてあげること。それが、受験期において何より大きな支援となります。

そして、受験成功のカギは、学力だけでなく「継続力」と「心の支え」です。どんなに優秀な子でも、途中で気持ちが折れてしまえば、ベストな結果は出せません。逆に、途中でスランプがあっても、粘り強く続ける力があれば、最後に逆転することもあります。

お子さんがコツコツ努力を積み重ねられるように、日々の小さな成功体験や変化に目を向けて、「昨日よりちょっと成長したね」「頑張ってるね」と声をかけてあげてください。その一言が、「よし、また頑張ろう」という原動力になります。

また、受験が終わったあとも、保護者の関わりは続きます。合否の結果がどうであれ、受験という大きな挑戦をやり遂げたお子さんをまずは心からねぎらうことが大切です。合格の喜びはもちろん、うまくいかなかったときも、「努力してきたこと自体が価値ある経験だよ」と伝えることで、次のステップに向かう気持ちを支えられます。

たとえ希望通りの結果が得られなかったとしても、それはお子さんの価値を下げるものではありません。受験を通して得た「努力の習慣」「考える力」「壁を乗り越える経験」は、これからの人生に必ず役立つものです。そうした成長の一つひとつに、保護者として寄り添ってきたことは、親子の絆をより深くしてくれるはずです。

そして何より、この受験期は、お子さんが大人への第一歩を踏み出すための大切な時間です。自分で考え、選び、努力する。そういった経験を重ねることで、進学後の学び方や人間関係、将来の進路選択にも良い影響が出てきます。

だからこそ、保護者の皆さんには「受験=結果を出すための戦い」ではなく、「親子で成長を分かち合うプロセス」としてとらえてほしいのです。

きっと、数年後に振り返ったときに、「あのとき一緒に頑張ってよかったね」と笑って話せる日が来ます。そのとき、お子さんはもう少し頼もしい姿になっているかもしれません。そして、親としてもひとつ、大きな役割を終えた実感を得られるでしょう。

受験は、たしかに大変な道のりです。でも、決して孤独な戦いではありません。親子で同じ方向を見て、ときに悩み、ときに笑いながら、前に進んでいく――そのプロセス自体が、かけがえのない経験になります。

最後に、お子さんのこれからの挑戦が実り多きものとなること、そして皆さんご家族にとって、受験を通してさらに絆が深まることを、心から願っています。